共創事例紹介

知財・技術起点の共創により生み出された事例をご紹介します

共創事例

パナソニックは技術でスタートアップ企業の次のチャレンジを後押し

 パナソニックは、保有する技術・特許の活用を社内外のパートナー企業に活用いただくことで、社会課題を解決していくために様々な取組を進めています。その取組みの一つとして、Piece Future主催のオープンイノベーションプログラム”IPHatch”に参画しています。IPHatchは、大企業の特許を起点として、大企業・スタートアップ間の共創活動を支援するプログラムであり、当社はプログラムの立ち上がり段階から積極参加しプログラムをリードしてきました。いまでは、パナソニック以外の多くの大手企業も参画しています。

 今回、パナソニック特許を活用して事業成長する香港、シンガポール、マレーシアのスタートアップ(5G nuMultimedia社、ALGOGENE社、Engage Nova社、Veriva Systems社の4社)にインタビューを実施しました。IPHatchに参加して、パナソニックの特許技術を活用したいと考えるに至った背景や経緯、パナソニックの特許技術を選んだ決め手等、多岐に渡ってお話いただきました。

【課題解決のピンポイント特許の獲得、そしてテクノロジー企業としてのプレゼンス向上】

―IPHatchに参画した経緯を教えてください。また、パナソニック等大手企業の特許技術の活用に至る経緯を伺えますか。

(5G nuMultimedia)産業用ドローン・ソリューションの企画・開発、及びSTEM/STEAM 教育やドローン訓練に取り組む中で、自社ドローンを開発するために必要な技術を獲得したいと考え、IPHatchに参画しました。

(ALGOGENE)IPHatchは、香港だけでなく、日本や東南アジアにも強力なネットワークを持っています。そのような様々な人々がいる場において、自社のアイデアを披露し、業界の専門家や潜在的な投資家とつながる機会を求めてIPHatchに参画しました。

(Engage Nova)当時、手動の配送・配車スケジュール及びルーティングの管理に課題を抱えている顧客がいました。そこで、そのような顧客に対するソリューション提供を検討している際に、パナソニックが配送スケジュール及びルーティング計画・管理に関する特許を保有していることを知りました。この特許を確認・分析したところ、顧客の抱える課題解決に非常に適していることがわかり、この特許の譲渡の可能性があるIPHatchに参加することを決めました。

(Veriva Systems)特許が価値あるものであり、特に自社事業に関連する特許を持つことはテクノロジー企業としての価値を高めることにつながると考えています。一方で、我々のようなスタートアップが負担するには特許出願に係るコストは大きいことから、特許出願の負担なしに、早期に大手企業の特許を獲得できる仕組みを知り、IPHatchに参画することを決めました。

【得意分野の周辺にある大手企業の特許技術を取込、製品・サービスの価値を高める】

―具体的にパナソニック等の特許技術を活用し、どのような製品・サービスの開発を進めましたか。

(5G nuMultimedia)パナソニックの「撮像装置」に関する特許を自社で開発中のナイトビジョン・ドローンのカメラ機能に活用予定です。

(ALGOGENE)パナソニックから譲渡された「顔抽出装置」に関する特許は、画像内の人間の顔を識別および分析する方法に関連しており、プラットフォーム上の相談・コンシェルジュ機能であるAIアバターにおいて、人間の表情を正確にキャプチャし再現する機能として活用しています。ALGOGENEは、文章や数値等のテキストデータの処理が得意分野である一方で、画像処理・分析の専門家ではありません。そのため、顔検出アルゴリズムを実装できるか懸念がありました。しかし、パナソニックの技術を取得できたことにより、視覚化分野における技術への理解が深まったこともあり、この分野における課題を克服することができました。

(Engage Nova)パナソニックの「訪問計画生成方法およびシステム」に関する特許を譲渡してもらいました。この特許は、多数の目的地を訪問する複数のグループの訪問計画(ルーティング)を最適化する技術です。この特許により、固定または可変のメンバーで構成される複数のグループを考慮し、効率的に目的地を割り当て、ルートを計画するというソリューションが可能となりました。特許譲渡後、特許の研究から始め、プロトタイプの作成・改良を重ねたことで、最終的に顧客がリサイクル材料の収集を効率的に管理するためのプラットフォーム・ソリューションを開発できました。

(Veriva Systems)パナソニックの「編集装置」および「番組視聴プログラム」に関する特許を譲渡してもらいました。AI駆動型音声・コミュニケーション監視コンプライアンス&リスク管理プラットフォームおよびSNSインテリジェンス・感情分析ツールにパナソニックから譲渡された特許を組み込むことで、ソリューションの機能を向上させるとともに、プラットフォームやツールの背景にあるテクノロジーの価値を高めることもできました。

【事業構想の実現に向けて、業界リーダー企業の特許を狙い撃つ】

―パナソニック等大手企業の特許技術の中から、今回活用する特許を選んだ決め手は何ですか。

(5G nuMultimedia)直接的にはパナソニックが持つ技術分野におけるブランド力と、カメラ及びマルチメディア分野における先進技術に期待してパナソニックの技術を選定しました。加えて、間接的にはパナソニックのグローバルな販売網や資金調達ネットワークにも関心があったことも選定理由の一つです。パナソニックの技術の活用を進めている点を受けて、公的機関や教育機関との商談の際に、ソリューション等に対する説得力が高まり、信頼感の醸成に役立っています。

(ALGOGENE)様々なテクノロジー大手企業から技術の提供を受ける機会がありました。その中で、複数の技術を比較していく中で、パナソニックの技術を発見したことを一つの契機として当時はまだ大まかなアイデアしかなかったAI金融アドバイザーを構築するという構想の実現を進めようと決断しました。

(Engage Nova)当時、既に顧客ニーズが顕在化している状況にありました。そのため、譲渡される特許が顧客の抱える課題解決に合致しているか、そしてどれだけ効果的に顧客ニーズに対応できる技術かを主な選定基準として、特許を選定しました。更に、顕在化している顧客ニーズだけでなく、その他の顧客への価値創出につながるかも評価し、より広い市場での商業・事業化の可能性も探っていました。最後に、既に保有・開発済みのソリューションとシームレスに統合できるか、今回譲渡される特許の影響を最大化できるか、その方法も検討したうえで、パナソニックの特許を選びました。パナソニックの特許を譲渡してもらえたことにより、顕在化していた顧客ニーズに対応する効果的かつ効率的なソリューションを成功裏に提供できました。更に、技術的な観点として、今回の特許の取り込みを通じて、統合された処理エンジンを備えたソリューション実装に関する貴重な洞察を得ることができました。

(Veriva Systems)自社ソリューション・サービスに関連する技術であるかが主な決め手でした。そのため、パナソニックの特許のみを狙ってIPHatchに応募しました。大企業の技術に対する期待の一つに、大企業の特許を組み込んだソリューション開発の資金調達が容易になることを期待していました。しかし、特許移転後に、特許を活用した資金調達は当初、期待していたようにはできませんでした。しかしながら、開発に尽力した結果、既に特許情報からプロトタイプ作成、新製品への組込みまで完了し、更にはその新製品の商業化まで到達できています。現在、顧客層を拡大するためのマーケティング活動に注力しており、その活動費用のための資金調達手段として、引き続き特許を活用した資金調達に期待を寄せています。

■ 5G nuMultimedia社の事業概要

5G nuMultimediaは、香港を国際的なドローンXRマルチメディア教育都市として構築することを目指しています。主なサービス・製品としては、1つ目にSTEM/STEAM学校向けのAOPA教育用ドローン(B2BおよびB2C市場)を企画しています。2つ目に、STREAM向けのプロフェッショナルドローンシステムを企画し、教育サービスを提供しています。私たちのドローン教育サービスは、グローバルに拡張可能なハイブリッドコースを提供し、中国における公的な資格試験の取得を支援しています。
Corporate Webサイト:https://5gnumultimedia.com/
#5G4K Drone

■ ALGOGENE社の事業概要

Algogeneは、HKSTP(Hong Kong Science and Technology Parks Corporation/香港特別行政区政府が2001年に設立した大規模な研究開発拠点)の下でインキュベートされているFinTechスタートアップで、クライアントが科学的かつ自動的に投資を行うのを支援します。クライアントがDIY投資ロボティクスを構築およびテストし、さまざまな自動化レベルで投資戦略を実際の取引に展開するためのビッグデータツールを含むワンストップ投資プラットフォームを提供しています。
Corporate Webサイト:https://algogene.com/
#One-stop Investment Platform、Algo Marketplace

■ Engage Nova社の事業概要

Engage Novaは、フィールドサービス技術に焦点を当てたシンガポールのスタートアップです。Engage Novaは、サービス会社やフィールドサービス企業と協力して、デジタル化と技術を通じて顧客エンゲージメントとフィールドサービスの生産性を向上させる支援を行っています。
Corporate Webサイト: https://www.engagenova.com/solutions/
#Smart Routing、Data Driven Decision、Visual Analytics、Claim Management、Logic Solutions、Process Optimization

■ Veriva Systems社の事業概要

Veriva Systemsは、金融サービスおよびコールセンターの規制ガイドラインを満たすために設計されたエンドツーエンドのコンプライアンスソリューションを提供しています。Veriva Suiteは、電話制御、通信記録、文字起こし、AIトラッキング、データ分析を単一のプラットフォームに統合することで、全体的なコストとコンプライアンスの複雑さを軽減します。Verivaのユーザーは、任意のウェブブラウザを使用して、直感的なダッシュボードからインタラクションデータを簡単に追跡、キャプチャ、アーカイブ、レポート、分析することができます。
Corporate Webサイト: https://www.verivasystems.com/
#Data Aggregation、Customer Engagement、AI Driven Voice & Text Analytics、Compliance Solutions

<関連情報>

・IPHatch® | Open Innovation Challenge
 https://www.iphatchday.com/ja

・東北大学プレスリリース:日本の大学として初めてIPHatch®︎の枠組みを活用したスタートアップ企業への特許権の譲渡を実施
 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/04/press20250430-04-iphatch.html