共創パートナーインタビュー

実際にマッチングした共創パートナーに
インタビューをした記事を紹介します。

06 歩留まりとの闘い

(黒田)パナソニックHDとの連携後、どんな点で苦労されましたか?

 社内的な調整について、社長の方には私の方から知財を使った取り組みをしたい、というような説明をしていました。パナソニックHDとは従来から取引があったので、何事もなく、逆にそのような有り難い話なら進めてくださいという感じでした。
 この研究開発の体制は3名でうち2名が設計担当者でした。基本的に、大学の方に素材開発を進めていただいて、電極の設計は弊社で行うというような形で進めていました。
 研究開発を進めるにあたり、外野の批判的な声もありませんでした。先に進んでいく中で、懸念する内容が出てくることはありましたが、取り組みの開始段階ではありませんでした。モノを見て、真似てそっくりなものを作ろうと設計をする段階で、図面はできるものの本当に加工できるのかという意見は一番多く上がりました。
 一番苦労したのはそこで、図面上ではいくらでも書けますが、加工が出来るメーカーがありませんでした。色々国内のメーカーを当たりましたが限界があるという回答でした。思っているようなものができないという壁があり困っていたところで、たまたま新規のメーカーが来られた際にその加工ができないかという話をしたところ、その新規メーカーさんの知り合いや関係先に聞いていただけ、加工ができましたという回答をいただきました。
 多くのメーカーさんに断られたのは、加工そのものよりも、品質的な保証が出来ないというところが一番の原因でした。また、価格がとても高くなってしまったのも一因です。
 というのも、歩留まりがものすごく悪いという点にありました。例えば、10枚作るのに20-30枚作ってその中で良いものを10枚取れますというような感じでした。金額が上がり歩留まりも悪いという状況でしたので、生産性が悪く、中々お願いできない状況でした。さらに最初は100角くらいのサイズで作っていましたが、だんだん大きいサイズにしていきたいということでポイント数を増やしていくとやはりできない、ということになっていました。故に、どのぐらいの歩留まりで出来るかの保証が出来ないため難しいというような回答でした。
 それを解決できたのは、やはり加工できるメーカーがあったというところと、設計のところでも工夫をしたからです。
 例えば面積を広く取るためにポイントのピッチを広げて価格が下がるような構造にしていた点が挙げられます。

07 共創を通じた新たな芽

(黒田)パナソニックHDとの共創で良かった点はなんでしたか?

 そうですね。共創により、自社にはない技術を紹介いただいて使わせていただけるというところが無ければ、感圧ゴムセンサーは出来ていないです。そのように考えるとすごく有り難いですし、今までできなかった取り組みを進めていける貴重なイベントだと感じました。これが無ければ、今の用途やモノ自体が出来ていないと思います。それくらい有り難いです。特に、技術的な支援はすごく早かったです。
 また共創によっては開発スタイルにも良い変化がありました。まず、積極的に社外に情報を取りにいこうとする動きが出来ました。また、ビジネスマッチングなどのイベントに積極的に参加させていただいて、ネタを探す動きは活発になりました。

08 曲面追従の可能性

(黒田)今後の展望は?

 今までできなかった曲面追従型のセンサー開発ということができたため、色々な用途を展開しているところなのですが、一つは引き合いがあったゴルフのグリップの曲面に貼り付けた、握り圧の圧力分布の計測システムの開発が出来ました。これは、まだ販売体制には移れていないですが、デモ機が出来ていて、実際に握り圧を計測してデータを取るというような状態になっています。その他にも、例えば椅子の座面の着座の圧力分布や当初の目的であったロボットハンドへの取り付けも今進めています。また、曲面追従型センサー単体でも開発を進めています。

 やはり曲面に追従する場面がすごく多いと思います。平面だと限られた場面でしか使えないですけど、曲面だとかなり用途が広がると思います。また、曲面という意味では電極が変形に対しての追従性を持っているので、例えば押し付けて曲げるような場所、椅子の座面などに追従性があるので使えます。あとは既に多く出ていますが、ベッドのセンサーにも使えると思います。ストレッチャブル機能を活かした具体的な用途開発をどんどん進めていかないといけないと考えています。

 ゴルフのグリップ適用の将来は、個人的にも期待しています。これは、世の中に今ないデータでありますので、データの有効性検証も必要ですが、まずはデータを集める目的でティーチングプロの方と契約をして、データをまず集めようという作業を考えています。有名な某プロゴルファーの方などのグリップのデータを取ろうとしています。データが取れてシステム化できれば面白い展開になるのではないかと考えています。

 ゴルフのセンシングは進んでいますが、その中で一番肝心な道具とつながっている手のデータが取れていません。そのデータの有効性はわかっていないものの、間違いなく有用な情報として何かあるはずだと考えています。例えばプロの上級者と中級者・初心者の中での違いや、あとは自分の状態で調子がいい時と悪い時で違いがあるはずです。

 現状の指導では、「しっかり握ってください」や「卵を潰さない程度で」といった非常にアナログ的な表現しかないので、それが数値化されて同じ数字で持ってください、というようなことが出来ると思います。実際にデータを取る中で、プロの方に測定してもらいましたが、「自分がこんなに強く握っているとは思わなかった」とおっしゃっていました。また左が強いと思っていたのに、右のほうが強いというデータが出て、逆にそれがバランスを崩してしまわないか心配ではありますが、自分の感覚との違いもわかったりします。今見えていないデータが見えるようになることで、何か新しく次につながっていくのではないかと考えています。

 グリップっていろんなスポーツで使うので、次考えているのは、野球のバットですね。例えばインコースアウトコース打った時にどっちの手にどのぐらい力が入っているか、日本人メジャーリーガーがインコースを打つときのグリップの強さはどっちが強いのか、そういうデータは絶対測定してみたいのではないかと、そんなことも考えています。
 この電極があったおかげで、そういうことが出来るようになりそうだというところに来ています。もしこの電極が無かったらそこに行けていないです。