共創パートナーインタビュー
実際にマッチングした共創パートナーに
インタビューをした記事を紹介します。
写真右:イナバゴム 技術開発センター 河原氏
写真左(聞き手):パナソニック ホールディングス 知的財産本部 黒田
イナバゴムは、感圧導電センサーに強みを持つ、精密ゴム成形・製造企業。2020 年公益財団法人鳥取県産業振興機構のイベントを通じ、2022 年にパナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)と「ストレッチャブル基板技術」のライセンス契約を締結。自社製品の感圧導電センサー「イナストマー®」にパナソニックHDの技術を利用し、長年実現できなかった 3D 曲面に追従する特性を持った感圧導電ゴムセンサーの開発に成功。「グリップの握り圧力測定用等のストレッチャブル圧力センサー」の開発・製品化を目指す。
パナソニックHDとの連携における詳細をイナバゴム 技術開発センター長の河原氏に伺った。
(黒田)弊社との共創に至った課題はどういったものでしょうか。
弊社はゴムの成型・製造のメーカーで、オリジナル商品というところで感圧ゴム、圧力センサーを販売しております。大学との共同開発を進めており、近年ロボットハンドに関するテーマに取り組んでいます。素材の方は大学の方でアドバイスいただいて、感圧ゴムを弊社で製造販売しています。
ロボットハンドへのゴム適用先は、更なる省人化を目的としたロボットの把持部にあります。この把持部に圧力センサーの取り付けを目指しているのですが、“曲面追従”が課題でした。“曲面追従”につき、ゴムそのものはストレッチャブル性があって、追従性はあります。しかし、“感圧ゴム”として、性能を引き出すためには、パターン化された電極部材の追従性が問題でした。従来使用している部材は、フラットシート構造であり、曲面追従できないという課題があります。この課題を突破しないと、製造現場での人の代替を進められる、感圧センサーが出来ないため、頭を悩ませていました。
曲面追従が可能となれば、ロボットハンド以外にも、スポーツ科学の分野、例えば、三次元曲面にそれを取り付けて、人の握り圧やグリップの圧力を計算することで、データ化する前まで見えてなかったデータを数値化することによって、それが健康促進やスポーツのさらなる発展に役に立つのではないかと考えています。実際、「ゴルフのグリップの計測をしたい」という引き合いも受けていました。グリップも二次元曲面ではなく三次元曲面であるため、曲面追従課題が常に付きまとっていました。
(黒田)どのようにパナソニックHDの技術を見つけて頂いたのでしょうか。
鳥取県産業振興機構様(以下、「産業振興機構」)のご紹介がきっかけです。
元々、産業振興機構さんや発明協会さんとは以前からお付き合いがあり、担当者の方に度々お越し頂いておりました。大学との取り組みは実施していましたが、企業の知財を使った取り組みをこれまであまり実施していなかったのと、部署柄、新製品の開発などに取り組んでいるので、何かネタがないかということで紹介いただきました。
どういったことに取り組まれているのかを実際見てみたい、そして何かヒントになるようなものがあればと考えて、参加させていただきました。オンラインで気軽に参加できた点もありますが、本当に「まぁ何かあればいいな」くらいの感覚だったのが正直なところでした。
そのイベントに、パナソニックHDのスレッチャブルLED技術の出展がありました。私としては何気なく見ていた際に、誰かがぼそっと「これ、グリップに使えないですかね?」と呟いたんです。その時に、はっとしたのを今でも覚えています。この技術、ストレッチャブル性のある構造という項目だったので、そこから何か糸口になると思いました。応用が利くはずだと感じ、ひとまず詳細を伺うための契機になりました。